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浦和地方裁判所 昭和53年(わ)116号 判決 1978年9月18日

本籍

福岡県飯塚市大字目尾一、二五六番地

住居

埼玉県桶川市東二丁目五番一一号

医師

木下利二

大正一二年六月一六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官中村誠二出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年四月及び罰金二、八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金七万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、埼玉県桶川市東二丁目五番一一号に居住し、同所において「木下産婦人科医院」の名称で医療保健業を営んでいるものであるが、所得税を免れようと企て、診療収入の一部およびお産セット・医薬品等の販売収入の全部を除外するなどの方法により、その一部を秘匿したうえ、

第一  昭和四九年分の総所得金額が六、二四八万九、九四八円で、これに対する所得税額は三、三一七万九、七〇〇円であるのにかかわらず、昭和五〇年三月一四日、埼玉県大宮市土手町三丁目一八四番地の大宮税務署において、同署長に対し、みなし法人課税を選択したうえ、みなし法人所得額が三三〇万七、一〇二円、総所得金額が七六六万七、二三一円で、これらに対する所得税額は合計一八六万六、五〇一円(一〇〇円未満端数切捨前の金額で、うち八三万八、七七〇円は事業主報酬に対する源泉徴収税額)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出して確定申告期限である同月一五日を徒過し、もつて、不正の行為により昭和四九年分の所得税額三、一三一万三、一〇〇円(一〇〇円未満端数切捨後の金額)を免れ

第二  昭和五十年分の総所得金額が六、八三四万九、七八三円で、これに対する所得税額は三、六七二万三、〇〇〇円であるのにかかわらず、昭和五一年三月二日、前記大宮税務署において、同署長に対し、みなし法人課税を選択したうえ、みなし法人所得額が八万六、九三九円、総所得金額が七六五万一、九二〇円で、これらに対する所得税額は合計一一五万〇、八一八円(一〇〇円未満端数切捨前の金額で、うち一四六万〇、四〇〇円は事業主報酬に対する源泉徴収税額)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出して確定申告期限である同月一五日を徒過し、もつて不正の行為により昭和五〇年分の所得税額三、五五七万二、一〇〇円(一〇〇円未満端数切捨後の金額)を免れ

第三  昭和五一年分の総所得金額が七、六二七万五、三二一円で、これに対する所得税額は四、二二三万五、〇〇〇円であるのにかかわらず、昭和五二年三月一二日、前記大宮税務署において、同署長に対し、みなし法人課税を選択したうえ、みなし法人損失額が四〇万二、六二二円、総所得金額が八六七万円で、これに対する所得税額は一四四万一、六八九円(一〇〇円未満端数切捨前の金額で、うち一八四万五、二四〇円は事業主報酬に対する源泉徴収税額)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出して確定申告期限である同月一五日を徒過し、もつて、不正の行為により昭和五一年分の所得税額四、〇七九万三、三〇〇円(一〇〇円未満端数切捨後の金額)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判事全事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書二通

一、大蔵事務官の被告人に対する昭和五二年六月二八日付、同月二九日付、同月三〇日付、同年七月一日付、同月二日付(二通)、同月六日付、同年八月二四日付、同年九月一六日付、同月二八日付、同年一〇月四日付、同月六日付、同月七日付各質問てん末書

一、被告人作成の答申書および証明書

一、木下朗子の検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官の小林勝典、登坂篤、木下朗子(三通)、遠山つや子、小野ふみに対する各質問てん末書

一、左記の者作成の各答申書

木下朗子(二通)、黒沢寛太郎(二通)、加藤衛、須藤貞男、藤咲通憲、佐藤忠雄、池田嘉吉、小林稔、太田正幸、太田龍良、市川昭典(二通)

一、木下朗子、外谷水城各作成の各上申書

一、大宮税務署長作成の所得税過少申告事実および青色申告承認の取消決議に関する各証明書

一、検察事務官作成の昭和五三年一月一七日付、同月二七日付各報告書

一、左記の者作成の各調査書

大蔵事務官外谷水城(昭和五二年八月二二日付、同年九月一六日付((四通))、同月二二日((二通、同意書件数および簿外支出金に関するもの))、同年一〇月一日付((二通))、同月一五日付((五通)))、同小池武彦(同年一〇月一一日付)、同若林建夫(二通)、同酒井幸雄他二名

一、大蔵事務官矢島義幸、同若林建夫各作成の各確認書

一、内匠屋栄他一名共同作成の証明書

一、矢野芳郎作成の供述書

判示第一および第二の事実につき

一、小林俊郎、大島米穀店各作成の各答申書

判事第一の事実につき

一、検察事務官作成の昭和五三年一月二八日付報告書

判事第二および第三の事実につき

一、大蔵事務官被告人に対する昭和五二年九月二七日付質問てん末書

一、左記の者作成の各調査書

大蔵事務官小池武彦(昭和五二年九月二八日付)、同外谷水城(手形割引に関する同月二二日付)、同渡辺達雄他二名、同千葉二郎他二名

一、西山茂男、町田とし子、松本トシ子、福田脩、斉藤彰各作成の各答申書

一、吉田啓作成の供述書

一、桶川市長作成の証明書

判事第三の事実につき

一、甘楽栄三郎、村井操各作成の各答申書

一、出井道雄作成の証明書

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項、二項に該当するので、いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判事各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年四月及び罰金二、八〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金七万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 北野俊光)

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